効率的・効果的な浸水対策に資するポンプゲート設備に関する技術マニュアル
概要
本技術マニュアルは,主に河川の小規模排水機場に活用されてきた,既存水路を活用し省面積かつ短期間での施工が可能な小規模雨水ポンプ場に用いる「ポンプゲート設備」について,技術概要および下水道事業として実施する場合における施設計画,設計,運用等に関する事項を示し,マニュアルとして活用頂くことで,地方自治体における浸水対策の促進支援を図ることを目的としています。委員会における審議
共同研究期間:H29年8月~平成31年3月共同研究者:旭川市,高知市,株式会社NJS,株式会社石垣,株式会社丸島アクアシステム
【委員会における審議・指摘事項と回答・対応】
本共同研究について、各委員会における主な審議・指摘事項とその回答・対応を下記に整理する。
◆ストック活用型浸水対策等調査検討委員会における主な審議・指摘事項と回答・対応
年度 | 回数 | 開催日時 | 主な審議・指摘事項 | 回答・対応 |
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H29 | 1 | 9月8日 | きょう雑物に対してのポンプの安定性 | 基本的には、ポンプの前段にポンプ保護のための除塵機もしくはスクリーンを設置して対応を行うこととする。 |
河川水位上昇時のポンプ運転停止 | 河川水位上昇時は外水氾濫を避けるため、ポンプの運転停止ルールについて河川管理者と協議を行う必要がある。(研究の中で河川協議、排水制限について整理する。) | |||
2 | 11月27日 | ポンプ種類による影響 | ポンプの種類(立軸ポンプ,横軸ポンプ,低水位型横軸ポンプ等)の違いによる影響や,どのポンプにどのような優位性があるのかについて整理する。 | |
既存ストックの活用 | 既存ストックを活用する際の仕様選定において,どのような現場条件によりどのような制約を受けるのか,どのような仕様が適用できるのかを整理する。 | |||
3 | 2月21日 | 段階的な対策時の当面排水量の決定方法 | 既存水路の寸法から、設置可能な最大のポンプの口径や吐出量が決まり、その制約の中で可能な対策を検討することを記載する。 | |
騒音対策 | ポンプゲート設備を住宅地に設置する場合は、騒音も問題になると思われるため、騒音対策や住民説明についても記載する。 |
◆雨水対策共同研究委員会における主な審議・指摘事項と回答・対応
年度 | 回数 | 開催日時 | 主な審議・指摘事項 | 回答・対応 |
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H30 | 1 | 7月18日 | 水位低減効果(水路内貯留効果) | 河川水位がHWLまで上昇して排水が出来なくなった時に、どれだけ水位を低く保てていたのかという効果についても言及する。 |
段階的な対策時の中長期対策について | 段階的な対策としてポンプゲート設置する場合の、当面の排水量で不足する分の対策メニューについても、今後整理する。 | |||
2 | 11月21日 | 設備の自動制御 | ポンプやゲートを自動制御する場合の制御水位設定について、できるだけ具体的な事例や考え方等も示すとともに、設定値見直しの重要性についても記述すること。 | |
地域住民とのリスクコミュニケーション | 設備設置後も評価を行い、導入効果(被害軽減効果)があること、一方で非常に大きな雨が降った時には浸水する可能性がある事を理解して貰うことが重要。マニュアルにおいても地域住民とのリスクコミュニケーションについて言及する。 | |||
運転データ蓄積 | 制御値の見直しや、導入効果の検証および住民説明用に、データの蓄積が重要であることを言及する。またデータ蓄積を積み重ねることにより、将来的に流域全体での浸水対策につなげられるとも考えられるため、そちらについても言及する。 | |||
3 | 2月15日 | きょう雑物対策,スクリーン閉塞時の対応 | 手掻スクリーンが閉塞して水が流れなくなった場合にも対応がとれるよう、スクリーンの場合にも引上げ装置を設置することを推奨する。 | |
ポンプゲート以外での横軸低水位ポンプの適用 | 横軸の低水位型ポンプは,ポンプゲートだけにとどまらず幅広い使い方で用地や工期を抑えることができることを、資料編にて紹介する。 |
◆技術委員会における主な審議・指摘事項と回答・対応
年度 | 回数 | 開催日時 | 主な審議・指摘事項 | 回答・対応 |
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H30 | 1 | 8月9日 | 設備の耐水化対策 | 電気設備を、想定降雨時にも水没しない高さ等に設計するなど、耐水化対策についても検討すること。 |
自助の啓発 | 今回の技術が、段階的な浸水対策による被害軽減を想定しているものであれば、自助を組み合わせるという説明が良いのではないか。 | |||
2 | 12月12日 | 河川管理者との協議 | 下流の人口の多い地点に比較し、上流域では河川の整備が遅れていることが考えられる。そういった点についても留意事項として記載しておいてほしい。 | |
ポンプゲート活用時の留意事項 | 通常のポンプ場と比較したポンプゲート活用時の(スクリーン等をバイパス水路ではなく本川水路に据えること等による)留意事項を整理しておくこと。 | |||
3 | 3月6日 | 下水道施設計画・設計指針との整合 | 下水道協会とも連携し、改定作業中の下水道施設計画・設計指針と内容の整合を取っておくこと。 | |
故障時のバックアップ(予備機の考え方など) | ポンプは原則2台設置(1台故障した場合の完全な機能喪失を防止)とすることや、電源喪失時のゲートの自重降下(閉鎖)等についても言及する。 |
◆パブリックコメント
意見募集期間:2019年4月2日~2019年4月9日
【意見と回答】
No. | 頁 | コメント | 機構からの回答 |
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1 | 全般 | 本技術マニュアルの作成の目的は? | 平成29年に改訂された「雨水管理総合計画策定ガイドライン」の中で,既存の下水道施設を活用した浸水対策メニューの一つとしてポンプゲート設備が紹介されました。本技術マニュアルは,ガイドラインを技術面で補完する下水道事業用の実践的なマニュアルを目指し作成したものです。 既存水路を活用し,省面積,短期間かつ安価に施工が可能なポンプゲート設備を,本技術マニュアルを通して紹介し,普及させることで,地方自治体の皆様の効率的・効果的な浸水対策を支援することを目的としています。 |
2 | 全般 | 設備仕様等に関する数式や数値の取扱いは? | 本技術マニュアルは,ポンプゲート設備の初期検討(詳細検討を実施するか否かを判断する)段階において,地方自治体の職員の皆様が自ら導入を検討する際に活用頂くことを想定しています。そのため,できるだけ複雑な数式は用いず,導入可否の判断ができるよう,目安となる設備仕様(寸法等)を掲載しています。 ただし,これらの数値はメーカーや現場条件等により異なる場合がありますので,あくまで目安としてご利用頂くとともに,導入に当たっては別途詳細な検討が必要となります。 |
3 | 4-7 | 樋管損失計算における損失係数を1.5とした根拠は? | 樋管損失を考える際には,吐出水槽から樋管への流入損失と樋管から河川への放流損失を考慮する必要があります。そのため,損失係数として流入損失0.5と放流損失1.0を合算した値としています。 |
4 | 4-12 | 全速全水位制御を選定する場合の留意点はありますか? | 全速全水位制御を用いて先行待機運転を行う場合,排水せずにポンプを運転する時間分の電気代が増加します。ただし,排水していない時間は負荷が低いため,電力消費量も全量排水時の10~30%程度となります。(「資料編4.Q&A集」に解説を追加しました。) |
5 | 4-13 | 始動電流を500~900%とした理由は? | 始動電流の範囲はポンプとしての許容範囲を示したものではなく,一般的に想定される範囲を示したものです。近年は電動機の高効率化(トップランナーモータの採用)に伴って始動電流が増加しているため,このような記載としています。 |
※その他、ご指摘いただいた誤記等については適宜修正を行っています。
お問合せ先:研究第二部 | TEL:03-5228-6598 |