オキシデーションディッチ法の省エネ技術に関する技術資料
概要
下水処理場では省エネを目的とした様々な取り組みが行われていますが、小規模下水処理場の代表的処理法のオキシデーションディッチ法(以下OD法という)については、省エネの有効な手段が十分に整理されていないのが実情です。 本技術資料では、「消費電力量診断シート」により処理規模や流入水量比率に基づき標準的な消費電力量を示していますので、各処理場の省エネに関して、現状における全国的レベルを把握することができます。また、運転管理による省エネ技術、センサを用いた省エネ技術、省エネ型曝気装置等のOD法を採用している処理場の実情に応じた省エネ技術の概要、特徴を示すとともに、各自治体が効果的に省エネに取組むことが可能となるよう、導入による消費電力量削減効果についてとりまとめました。委員会における審議
共同研究期間:H28年5月~H29年3月 共同研究者:岡山市,株式会社ウォーターエージェンシー,JFEエンジニアリング株式会社,住重環境エンジニアリング株式会社,株式会社中央設計技術研究所,株式会社日水コン,株式会社フソウ,前澤工業株式会社【委員会における審議・指摘事項と回答・対応】
本共同研究について、各委員会における主な審議・指摘事項とその回答・対応を下記に整理する。
◆水処理技術共同研究委員会における主な審議・指摘事項と回答・対応
年度 | 回数 | 開催日時 | 主な審議・指摘事項 | 回答・対応 |
---|---|---|---|---|
H28 | 1 | 7月25日 | OD法の消費電力量の分析はどのように行うのか。 | 「下水道における地球温暖化マニュアル」に記載されている、下水道統計のデータを重回帰分析して算出した電力消費に伴うCO2排出量の全国平均値の算定式を、消費電力量に換算して分析にもちいる。 |
省エネ機器の提案技術が、機器と制御をパッケージ化したものとなっているが、個別で評価することは可能か。 | 機器と制御をパッケージ化した採用実績しかないため、個別での評価は難しいが、技術資料では機器や制御個別での特徴を記載するように努める。 | |||
自動制御をもちいた運転管理の提案技術で、消費電力量と処理水質の両方に効果が得られている理由がわかりにくい。 | 技術資料では、自動制御の概要、特徴について記載するとともに、消費電力量や処理水質に影響を及ぼす理由について記載する。 | |||
第3章の第1節運転管理による省エネ技術と第2節センサをもちいた管理技術はどのように区別されているのか。 | 第1節運転管理による省エネ技術では、現状の維持管理方法の工夫による省エネ手法について記載し、第2節センサをもちいた管理技術では、アンモニアセンサや濁度計、DO計等のセンサを用いた制御運転について記載する。 | |||
自動制御をもちいた運転管理で、濁度とBOD、T-Nとの相関関係をもちいているが、データを公開することは可能か。 | 技術資料では、濁度とBOD、T-Nの測定結果と相関グラフの例について記載する。 | |||
2 | 11月21日 | 第3章で省エネ型曝気装置、第4章で運転管理による省エネ手法について記載しているが、順番としては、まず既存施設を生かしたコストのかからない取り組みに着手することが多いのでは。 | ご指摘の通りなので、第3章と第4章の順番を逆にする。 | |
省エネ型曝気装置の章において、二点DO制御等のセンサをもちいた制御手法を記載しているが、運転管理による省エネ手法で取り上げる内容ではないのか。 | 省エネ型曝気装置は、曝気装置と制御を一体とした技術であり、制御単独で納入されることがないため、この章での記載としている。 | |||
温室効果ガス排出量について、OD法におけるN2Oの排出についての記載はしないのか。 | OD法においては、機械撹拌式の曝気装置を採用している処理場が多いため、N2O排出量の測定手法が確立されていないのが現状である。「下水道における地球温暖化対策マニュアル」に基づき、標準法の排出係数に準じている記載をする。 | |||
運転管理による省エネ手法で、MLSSを極力低くすることが有効としているが、MLSSを高く設定することで汚泥量削減の効果もある。汚泥処理でのエネルギー消費も含めて省エネとなるのか。 | 汚泥量削減による処分費用の縮減効果はあると考えるが、曝気装置のエネルギー消費に占める割合が大きいため、省エネの観点ではMLSSの最適化が有効であると考える。 | |||
汚泥脱水機で、消費電力量の観点における評価だけで有効性を示しているが、脱水性能、薬品使用量、温室効果ガス排出量、コスト等の他の項目も機種検討において重要と考える。 | 特徴として、汚泥脱水機の機種による影響は、OD法では比較的小さい。機種検討に当たっては汚泥処分費や維持管理性、環境影響等も含めた考慮が必要である等の留意点を記載する。 | |||
3 | 2月14日 | 流入比率の用語の定義で日平均処理水量という表記をしているが、計画日平均汚水量と混同する可能性があるのでは。 | 流入比率の用語の定義の中で、実績の日平均処理水量という表記に修正する。 | |
省エネ技術導入前後の水質を下水道統計の水質と比較しているが、スポットの測定データでは同列の比較にならないのでは。 | 導入前後の水質データは、1年間の水質平均値をもちいているため、下水道統計値と同列の比較をしている。 | |||
アンモニアセンサをもちいた運転管理と自動制御をもちいた運転管理があるが、どちらも省エネ効果が得られており、導入の判断がしにくい。 | アンモニアセンサをもちいた運転管理は、必要機材は可搬式のアンモニアセンサだけであり、安価なコストで複数の処理場に対応可能なメリットがあり、規模の小さな処理場への適用が考えられる。自動制御をもちいた運転管理は、計測装置と制御装置を組み合わせた手法であり、維持管理の中で現状は試行的に取り入れられている。 |
◆技術委員会における主な審議・指摘事項と回答・対応
年度 | 回数 | 開催日時 | 主な審議・指摘事項 | 回答・対応 |
---|---|---|---|---|
H28 | 1 | 8月2日 | 消費電力量には流入比率の影響が大きい結果となっているが、躯体の改造等で流入比率を向上させる方策について検討するのか。 | 躯体の改造による反応槽の容積変更は、高コストとなるため検討していない。間欠曝気による対応を考えている。 |
消費電力量診断シートは、省エネ効果を評価する上で妥当な値なのか。現状値に対する効果を評価すればよいのでは。 | 各処理場が、エネルギー消費量の全国的な立ち位置を把握し、省エネについて考えるきっかけとなることを目的としたものである。 | |||
センサをもちいた間欠曝気方法について、測定された水量、水質に対してどのような制御をするのかロジックが見えてこない。 | 流入水質の測定項目や測定値に対する基本的な制御方法について整理し、わかりやすく記載する。 | |||
2 | 12月2日 | 同じ流入水量で流入比率が低いと消費電力量が増加している理由は何か。 | 同じ流入水量で流入比率が低くなるということは、施設の現有能力が大きいことを示しており、最適点で運転するのに比べて効率が悪く、余分な電力を消費していると考えられる。 | |
自動制御をもちいた運転管理について、実際の処理場での実績はあるのか。 | 10ヶ所の下水処理場での適用実績があり、技術資料の中ではそれぞれでの省エネ効果を記載している。 | |||
3 | 3月2日 | 消費電力量診断シートをOD法を採用している自治体に配布することで、技術資料の活用を促進する取り組みをしたらよいのでは。 | 面白い取り組みと思うので、技術資料の送付に合わせて概要説明のリーフレットの送付を検討する。 | |
センサをもちいた運転管理では、導入前後の省エネ効果を記載しているが、処理水質への効果は検討しているのか。 | 技術資料では、各技術の省エネ効果だけでなく、水質改善効果についても検討し、記載している。 |
◆パブリックコメント
意見募集期間:2017年3月15日~2017年3月29日
【意見と回答】
特になしお問合せ先:資源循環研究部 | TEL:03-5228-6541 |