立命館大学 理工学部 環境都市工学科
准教授 佐藤 圭輔(さとう けいすけ)様
- 第1回:自己紹介
- 立命館大学の佐藤です。
私が過年度から取り組んでいる研究テーマは,「気候変動による生活圏・水環境への影響評価」です。
都市・沿岸域の浸水害や不明水の発生リスクを解析し,下水道を含む社会基盤あるいは環境汚染拡大への影響を評価してきました。
受水域や水源地への影響という側面からは,琵琶湖やその内湖(滋賀県),阿蘇海(京都府)それらの流入河川を対象に積極的な現地調査を行い,モニタリング法の設計やラボでの定量実験(有機汚濁物や栄養塩類,以前はダイオキシン類や放射性セシウムなど)を通じて,健全な水循環系実現のための技術提案を目指しています。 - 第2回:我々の役割と地域の選択
- 私は北海道旭川市(高専/制御情報工学)出身なのですが,その後,日立市(茨城大学/建設工学)で4年間,大津市(京都大学/環境地球工学,立命館大学/環境都市工学)で計18年間,名古屋市(名古屋大学/社会基盤工学)で3年間,ベトナム・ハノイ(日越大学環境工学)で2年間を過ごしてきました。
出会った方々,現地の風土,生活習慣に加えて,インフラや環境に対する価値観も地域によって大きく異なり,各地が目指す環境の管理目標もそれぞれにあるべきと肌身で感じてきました。
確かな情報整備と現象理解は我々の使命としつつも,将来の選択は地域の皆さんや学生らとともに考えていきたいと思っています。 - 第3回:海外生活から得られた教訓
- 2019年4月からの2年間,私はハノイ・日越大学に勤務していました。
人混みで活気あふれる市街,整備の遅れが目立つ社会インフラ(ハノイの下水道普及率は現在15%程度),無計画で柔軟で愛国心の強い国民性など,40年ほど昔の日本を思わせる雰囲気で,鈍感な私でも多くの驚きがありました。
ある日,同僚にライチ一袋の適正価格を尋ねたのですが,ベトナム人と日本人とでは最初の値付けがきっと違うと思いますよ,と言われました。
多くの日本人はぼったくられないようにと身構えるのですが,それよりも自分にとっての絶対的な価値を見極めて,交渉を成立させることが大事で,それを日常とすることの難しさを痛感してきました。 - 第4回:目指すべき未来は誰が決めるのか
- ハノイでは,老朽化したセプティックタンクの排水や投棄ゴミが都市河川に流れ込み真っ黒になっています。
我々がこれを見ると,これは汚いからまずいと思い,水道水は口に入れてはいけないと感じるかもしれません。
そして,日本と比較し,日本の技術できれいにしてあげようと考えます。
しかし,日本人が思っているほど現地では困っておらず,日本基準で考えることにヒントはあるものの,やはり目指すべき社会システムやその手段は現地基準で考えることが大事です。
一方で,我々は日本の環境がどのように守られているか理解し,それが本当に目指すべきものとの考えを持っているか,高度な社会システムで守られてきた我々こそ,複雑な未来に向けて再考すべきことがありそうです。