嫌気性消化法導入マニュアル策定に関する共同研究
概要
中小規模の下水処理場においては,経済性の確保が大きな課題となり,嫌気性消化法の導入が困難とされていた。しかしながら,昨今の社会状況から下水汚泥のエネルギー・資源利用に繋がる嫌気性消化法の導入は重要視されている。また,技術開発により中小規模の下水処理場でも嫌気性消化法導入の可能性が高まっている。以上より,嫌気性消化法を円滑に導入して,下水汚泥のエネルギー利用,資源利用に繋げられる手法を示すため,嫌気性消化法の概要,技術的事項や留意事項を解説するとともに,導入の参考となるケーススタディでの設計例について,「嫌気性消化法の導入マニュアル」として整理した。委員会における審議
共同研究期間:H27年4月~H28年12月 共同研究者:飯能市,氷見市,株式会社NJS,株式会社大原鉄工所,オリジナル設計株式会社,JFEエンジニアリング株式会社,株式会社神鋼環境ソリューション,住友重機械エンバイロメント株式会社,株式会社中央設計技術研究所,株式会社東芝,中日本建設コンサルタント株式会社,株式会社ニュージェック,株式会社松本鉄工所【委員会における審議・指摘事項と回答・対応】
本共同研究について、各委員会における主な審議・指摘事項とその回答・対応を下記に整理する。
◆汚泥処理技術共同研究委員会における主な審議・指摘事項と回答・対応
年度 | 回数 | 開催日時 | 主な審議・指摘事項 | 回答・対応 |
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H27 | 1 | 7月7日 | マニュアルで対象とする対象技術について | 中温消化をベースに共同研究者が有する技術を対象とする。 |
仮想処理場におけるケーススタディの検討条件(処理場規模等)について | 仮想処理場のケーススタディでは、日平均処理水量2万m3/日以下でどの規模で成立するかを検討する。 | |||
2 | 11月17日 | ケーススタディの検討諸元について | ケーススタディ毎の検討諸元の記載項目を統一する。 | |
導入効果の評価方法について | 自治体で導入のネックになっているのは経済性のためB/Cで導入効果を評価する。 | |||
便益に含む項目について | 消化槽を新設するケースでは、消化導入によって汚泥が減量化して処分費が削減される効果を計上する。 | |||
3 | 2月5日 | 費用の試算条件について | 実際の自治体の収入とはならない温室効果ガス削減効果は便益に計上しない。 | |
汚泥処分単価による感度分析の検討について | 仮想処理場のケーススタディでは中小規模処理場における処分単価の平均で検討している。処理場によって処分費は異なるので,処分単価の感度分析も検討する。 | |||
消化ガス発生量の考え方について | 消化ガスは投入有機物当り500Nm3/t-VSで算定している。 | |||
H28 | 1 | 7月12日 | 実処理場のケーススタディと仮想処理場のケーススタディにおける結果の乖離について | 実処理場における脱水汚泥の含水率が低いことが要因と考えている。 |
仮想処理場のケーススタディにおける処理場規模設定の考え方について | 中小規模処理場と称した際によくいわれる2万m3/日を基本として、最小規模の8.5千m3/日は共同研究者が有する技術で対応できる規模として設定した。 | |||
評価年数の考え方について | 「下水道事業の手引き」における鋼板製の汚泥等受入タンクの標準耐用年数(35年)やガス事業者における鋼板製タンクの稼働実績を参考に、通常の維持管理費に加えて、大規模補修費を計上することで、鋼板製消化タンクの評価年数を35年とした。 | |||
水処理への影響検討について | 返流水による水質負荷の増大について検討する。 | |||
2 | 11月14日 | 導入可能性の簡易診断表と実下水処理場におけるケーススタディ結果との整合について | 簡易診断表の基とした仮想処理場におけるケーススタディと実下水処理場におけるケーススタディで消化汚泥含水率の設定及び維持管理費の考え方に不整合があったため、合致させて修正する。 | |
簡易診断表の作成条件について | 簡易診断表の作成条件を明記する。 |
◆技術委員会における主な審議・指摘事項と回答・対応
年度 | 回数 | 開催日時 | 主な審議・指摘事項 | 回答・対応 |
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H27 | 1 | 7月27日 | 中小規模で嫌気性消化法の導入が難しい要因について | 消化槽自体の建設費が高いためである。 |
水素製造の導入について | 中小規模では導入困難である。 | |||
地域バイオマスの受入について | 本研究におけるケーススタディでは地域バイオマスの受入までは検討しない。 | |||
H28 | 1 | 8月2日 | 評価年数の示し方について | 共同研究者における技術的保証等から,35年での整理を予定している。 |
2万m3/日以上の処理場における導入可能性について | 「下水汚泥エネルギー化技術ガイドライン」等において検証しており,新設でもB/Cが成立することを確認している。 | |||
B/C以外の導入メリットについて | B/C以外の定性的なメリットについてもマニュアルで整理する。 | |||
2 | 12月2日 | 導入メリット等の提示について | マニュアル第1章で嫌気性消化法の導入における定量的なメリットを提示する。 | |
導入可能性の簡易診断表と実下水処理場におけるケーススタディ結果との整合について | 簡易診断表の基とした仮想処理場におけるケーススタディと実下水処理場におけるケーススタディで消化汚泥含水率の設定及び維持管理費の考え方に不整合があったため、修正する。 | |||
3 | 3月2日 | 固定価格買取制度の適用について | 消化ガス発電に関する共同研究で検討しており、本研究では嫌気性消化法の導入に主眼を置いている。 | |
水処理への影響について | 実下水処理場におけるケーススタディで返流水による水処理施設への影響は軽微であった。 |
◆パブリックコメント
意見募集期間:2017年3月15日~2017年3月29日
【意見と回答】
No. | 頁 | コメント | 機構からの回答 |
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1 | 11 | “経済性効果B/C”とされていますが,「下水道事業における費用効果分析マニュアル」では,B/Cは“費用便益比”と定義されています。本マニュアルで新たに定義する用語でしょうか。 | 「経済性効果B/C」は本マニュアルで定義した用語になります。「下水道事業における費用効果分析マニュアル」(国交省下水道部)における「費用便益比」とは、算定範囲が異なるため、新たに定義しています |
2 | 101 | 実際の検討では,標準法とOD法の処理場の消化率や投入有機物あたりのガス発生量設定値を変える必要はありますか。 | 今回のケーススタディにおいて、消化率等は「下水道施設計画・設計指針と解説2009年版」における中間値を採用しています。実際の検討では、汚泥性状で消化率等は変化するものと考えられますので、類似事例における実績等を参考に検討する必要も有効かと考えられます。 |
3 | 38 | 消化槽撹拌機に求められる性能(撹拌回数,底部流速等)に関する基準はないでしょうか。ケースバイケースでしょうか。 | スクリュー式や水中プロペラ式の場合は撹拌回数が8~12回/日程度が必要といわれています。撹拌回数は攪拌機流量(m3/時)×24(時/日)÷消化タンク容量(m3)で算出します。 インペラ式の場合は、消化タンクの容量・形状、汚泥性状等の条件を基に各メーカーのプログラムで羽根の形状・位置、回転数等の仕様を決定します。 |
4 | 26 | 消化槽は鋼板製でB/C比較しているが、コストが安いといわれているRC製円筒形はなぜ比較していないのか。 | コンクリート製の消化タンクもケーススタディで検討しており、その結果、鋼板製消化タンクの方が安価であったため、鋼板製消化タンクの結果を主に整理しています。 |
5 | 69 | 評価年数20年から35年に延伸した根拠が明確でない。 | 汚泥等受入タンク(鋼板製)の標準耐用年数35年、ガス事業者へのヒアリング結果(ガス事業では鋼板製のガスホルダー等は50年以上の稼働実績を有する)、共同研究者の民間企業へのヒアリング結果等から35年に設定しています。延伸のために通常の維持管理費に加えて、塗装の塗り直し等の補修費を見込むこととしています。 |
お問合せ先:資源循環研究部 | TEL:03-5228-6541 |